「美しい唇であるためには、美しい言葉を使いなさい」
アメリカの詩人サム・レヴェンソンの著書『時の試練を経た人生の知恵』に出てくる一節です。彼の詩集というより、女優オードリー・ヘップバーンが息子たちに読み聞かせた言葉として知られているかもしれませんね。
人に愛されるため、人を愛すためには、まず美しい言葉をしなければいけない、と。
言い換えるなら、「美しい言葉を使うことで、愛される人になる」といったところでしょうか。
しかし、多くの場合、美しい言葉を使うのは難しいものです。人々は往々にして悪口や噂話が好き。テレビのワイドショーでは歴史的な偉業を称えるニュースより芸能人の不倫が大きく扱われ、誰かが悲劇的な死を遂げた(例えば、お小遣いの工面を断っただけで「カッとなった」孫に撲殺される老人とか)というニュースがあっても、93歳のおばあちゃんが家族に見守られながら幸せな一生を終えたというシーンが伝えられることはありません。
そもそも「美しい言葉を使えば愛される」なんて、所詮綺麗事に見えますよね。言葉遣いで人生が変わるなら誰も苦労しないですから。
ですが、じゃあ「美しい唇であるためには、美しい言葉を使いなさい」に何の根拠もないかというと、実はそうではないことが、科学は証明しています。
人は自分が影響を受けていることに気づかない
言葉遣い一つで人の人生は面白いほどに変わる。
人間は、ある言葉に触れると、連想します。自分の考えをつないでいきます。自分の思考や経験と結びつけていくわけですね。結果、ある言葉が人生に大きな影響をもたらす、と。
ウソみたいな話ですが、科学的な検知から見ると実は正しいんです。
ここではある実験を紹介しましょう。
・Modeling: An analysis in terms of category accessibility
この実験では、2つのグループに分けた人々に、それぞれある課題を課しました。一方には暴力と結びつくような単語を並び替えさせ、もう一方は暴力に結びつかない言葉の並び替えを行ってもらいました。
その後、2つのグループの人々は、それぞれ別の参加者に20回の電気ショックを与え、その強さも自分で決めるというプログラムをこなしました。
その結果は驚くべきものでした。
なんと、先に暴力と結びつくような課題に取り組んだ人たちは、普通の人(暴力と結びつかない課題を課されたグループ)に比べて電気ショックの強度を48パーセントも強くしていたというのです。
当然、多くの人は自分が暴力的な言葉に影響されたなどとは思っていないでしょう。しかし、結果として多くの人は少なくとも通常の1.5倍ほど、言葉(から連想されるイメージ)に影響を受けていると行動で示してしまったわけです。
自分の言葉に、自分は動かされる
ここから学べることは、
・人は自分が思う以上に言葉に影響される(その言葉と結びつく事柄に吸い寄せられる)
ということです。
冒頭の話に戻ると、「美しい唇であるためには、美しい言葉を使いなさい」というのは、「美しい言葉を発すれば、美しい考えを持ち、美しい行動を取るようになる」ということを意味しているわけです。
(ちなみに人間は「思ったより先に口に出る生き物」なので、自分の考えがどうであれ、発した言葉によって自分の行動を決めてしまうことが往々にしてあります)
要は、
・幸せに生きるためには普段からの言葉遣いが大事
・普段から美しい言葉遣いをするように心がけられれば、思考や行動も伴ってくる
というわけですね。
ついつい、人の悪口を言いたくなってしまうのが人間ですが、人の悪口を言うより人の良い面に目を向けたほうが、人生は充実していくわけですよ。だって川谷絵音さんを「不倫野郎、クズ人間」って罵るより、彼の音楽を聞いて幸せになる方が人生充実するじゃないですか。
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